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兄は殺人犯 「アイシテル・・絆・・・」と「手紙」 [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

さあてと、今夜は何見ようかなあ。( ^-^)

例によってあてもなくチャンネルをまわして(正しくはリモコンを操作して(^^;;)辿りついたのが岡田将生だった。結局はイケメンに弱い九子である。(^^;;

タイトルは「アイシテル・・・絆・・・」
数年前話題になった番組の続編で、小学生が小学生を殺してしまった事件の犯人と犯人の弟の20年後の物語だそうだ。

岡田演じる弟直人は、小さい頃仲良く遊んでくれた12歳年上の兄智也が突然姿を消してしまった事を恨んでいる。兄に捨てられてしまったと思い込んでいた。

ところがある日直人は、ネットに出ていた20年前の小学生殺しの犯人が当時同じ小学生だった兄智也だったことを知ってしまう。

直人は兄ばかりではなく、事実をずっと隠していて彼に教えてくれなかった母親にも不信感を抱き、母と離れて一人で暮らしている。


犯行当時小学生と言えば、少年法に守られて彼のプライバシーはしっかり守られているはずと思ったのだが、現実にはどうなのだろう。
ネット社会はそんなことを許さないのだろうか?
少なくとも番組上では兄が殺人犯と言う事は近所中が周知の事実で、直人は言われの無い差別を受けている。

こういう場合、この地域を去って別の土地に行けばもっと楽に生きられそうな気がしてしまうのだが、母親は頑としてこの地を離れようとしない。少年の父親が彼の事を気に懸けながら病気で死んで行ったことが影響しているのだろうか。お墓を守るとか、そういう事なのだろうか。

このお話にはいい人たちが出てくる。直人の恋人の芸術家の加奈とその祖父だ。
彼らだけが直人の兄が殺人を犯した事を知りながら、彼を一人の人間として扱ってくれる。

兄が殺人を犯したために弟が不幸になるって話、どっかで聞いたなあと思った。
そうだ!東野圭吾の「手紙」だ。

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫

読んだ時はそれなりの感慨にふけったはずだったのだが、もうすっかり記憶のかなただ。(^^;;
もちろん例によって筋も忘れてしまっているので、これを機会にさらっと読み直してみた。

比べてみると同じような状況を描いた作品ではあるが、東野作品のほうがはるかに現実を深くえぐっていると思った。

言ってみれば「アイシテル・・絆」はまだ甘っちょろい。
それぞれの兄の性格の違いが、罪の意識の違いが、実は微妙に影響を与えているのかもしれない。

直人の兄智也は、何もそこまでと思うほど自分の罪を意識しながら生きている。
小学生の時の、それも相手にバカにされて掴みかかったら倒れた相手が打ちどころが悪くて死んでしまった、言わば過失致死と言えるほどの罪なのに・・・。

智也を演じる向井理はふだんひょうひょうとした演技をする。
その向井が、このドラマでは熱い。

智也は言う。自分が殺した被害者はもう生きて何をする事も出来ない。自分だけが生きて、ましてや幸せになることなど許されない。だから自分は幸せに背を向けて生きて行かなければならない。

そして彼は、幸せからも家族からも遠のいて一人ストイックに生きている。

その禁欲がただ一度揺らいだのが、弟直人の皮工芸の個展開催を知った時だった。
12歳で別れた弟が個展を開く。それを知った途端、もう矢も盾もたまらなくなって兄は弟に小さな白い花束を贈る。

その花束が兄からのものだとわかると、弟はそれを地面に叩きつける。

直人の兄の智也がそこまで自分の罪を意識して、自分に厳しく生きているのに対して、「手紙」の主人公直貴の兄剛志は、弟に刑務所から出す手紙が弟の人生にどんな影響を与えているかなどと考えもせず、言わば習慣的に、そうするのが社会とつながる唯一の窓とばかりに、他愛の無い手紙を書き連ねてくる。

二人の兄の生きざまの違いが間違いなく弟の人生の生き難さに影響している。

ストイックな兄を持つ直人は、兄が自分と接点を持つ事をひたすら避けているので、ふだんは直人の存在を最小限に抑えて生きていられる。

ところが直貴の場合は、忘れようとしても兄の刑務所からの手紙がどこまでも追いかけてくる。
独特の桜の花の検印の付いた、見る人が見ればすぐにそれとわかる手紙だ。

これは辛い。ある時などは恋敵の目の前でこの手紙が配達され、もちろん結婚は破談になった。
だから状況としては、「手紙」の主人公直貴の方が数段悪いと思う。

「絆」の方が甘っちょろい感があるのは、ひとつにはこういう背景にあると思う。

それと最大の違いは、結論の持って行き方だ。

「絆」では加奈に赤ちゃんが出来た時、直人は自分のように不孝を背負って生きる事になるからどうしても産んでくれるなと懇願する。

それが兄智也と向き合い、苦しい思いをぶつけた後に、自分が兄からも母からも愛されて生まれてきたという事実を納得してようやく、直人は加奈が子供を産むのを受け入れる。

言ってみれば「愛されて生まれてきた人間は幸せに暮らして行く資格がある。」みたいな、ちょっとベタな結論の持って行き方だった様に思う。

ところが「手紙」は違う。

「手紙」では直貴が婚約者との間の子供を規制事実にして結婚にこぎつけようとする、いわば子供を結婚の道具に使うような場面が出てきた。それひとつとっても、現実のドロドロ感がある。

例によって直貴は就職先の会社でトップの成績をあげているにもかかわらず、人目につかない倉庫での在庫チェックの部署に回されてしまう。

そこへ平野というこの会社の社長が出てくる。彼が良識人の代表みたいな意見をとうとうと述べて、直貴も読者もう~んと考え込まされてしまう。

彼はこういう意味の事を言う。

刑務所に入ったのは自分じゃないのに、自分が差別されていると思っているだろう。だがそれは違う。
差別は当然なのだ。大抵の人間は犯罪などから遠いところへ自分の身を置いておきたいと願う。
犯罪者やそれに近い人間を排除するのは、しごく当然な、いわば自己防衛反応なのだ。
恨むなら社会ではなく、罪を犯したお兄さんを恨みなさい、と。

う~ん。これは正論だ。

ややもすると犯罪者家族に対する言われ無き差別は、日本人独特の「村八分」と同列に語られがちだけれど、確かに世界中どこへ行っても見られる自己防衛反応だとすれば、それを理不尽だと責める事は難しい。

この後も平野社長は要所要所で現れて、社会と言うものの姿を直貴に説く。

平野社長の言葉を羅針盤にして、直貴はどういう結論を選んだのか、そして救いの無い物語の最後に訪れる救いとはなんだったのか。

どうぞ皆様もご自身で「手紙」を読んでみて下さいね。( ^-^)


犯罪を犯すという事、ましてや人の命を奪うという事は、自分だけではなくて最愛の家族をも長い長い苦しみの人生に引き入れるという事をよくよく考えなければならない。

怒り心頭に発して誰かを傷つけたい衝動に駆られた時、家族への思いが防波堤となってその怒りが鎮められなければならない。

そうするためには、温かい家庭を築かなければならない。笑顔あふれる家庭の中で、子どもを生み、育てなければならない。

たとえ満ち足りた家庭で愛情いっぱいに育てられたとしても、それに気付けない不幸な人間だってたくさんいる。

それと同じくらい、逆境の中に育っても自分を失わずに幸せを勝ち取った人々だっているだろう。

でもとりあえず、出来るだけ自分の周りの空間は居心地のよいものであって欲しい。
それが幸せに通じる第一歩なのだから。


えっ?掃除嫌いの九子さんちは物や埃が溜まっててさぞや居心地悪かろうって?
って、それはまた別のお話。(^^;;


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コメント 6

般若坊

本当に難しい問題です。罪を憎んで人を憎まずといいますが、どうも凡人には難しすぎます。どうしても加害者はもとより、近親者まで憎み排斥してしまいます。被害者の立場になってみれば、それもわかります。
”温かい家庭を築かなければならない。笑顔あふれる家庭の中で、子どもを生み、育てなければならない。” まさにその通りであると思います。
by 般若坊 (2011-10-03 22:31) 

九子

般若坊さん、こんばんわ。( ^-^)
お返事すぐでなくてごめんなさい。m(_ _)m
こういう調子の人間ですのでご理解の程を・・・。

もちろんうちの子供たちの中から殺人鬼など生まれてほしくありませんが、たとえば交通事故で人を殺してしまったりすることなら可能性として
ありますよねえ。

そういう場合、やっぱり家族も被害者になりますよね。
だから注意して気をつけて運転しなさいと言っていても、気をつけていれば事故を起こさないと言うものでもない。

もうこうなると祈るしかありませんね。
by 九子 (2011-10-04 20:03) 

よぽぽ

ご無沙汰でした。
マイプレスのほうのブログが何かきちんと表示されないので
こちらにお邪魔しました。

「アイシテル…絆」は見ていませんが
「手紙」は原作ではなく映画を見ました。
私の兄たちもかなり非行の限りをつくしておりましたので
(さすがに殺人や強盗はないですが)(汗)
すごく感情移入してしまって
見終わったあと、しばらく涙がとまりませんでした。
(映画館ではなく、家でVIDEOでみていてよかったです。)

ですから、自分ではできるだけ
本人の意思ではどうにもらないことで不遇な人を
差別はしないようにと思っているのですけど
なかなか難しいことですね。

加害者にも被害者にもならないことが一番ですけど
いろいろな事情でそれも難しい世の中ですね。
by よぽぽ (2011-10-06 17:56) 

九子

よぽぽさん!( ^-^)
すみません。いつもよぽぽさんから先にコメント頂いてしまって。

私、自分で友達少ない訳良くわかったわ。(^^;;
エネルギーが無いので新しいところで友達作るとそれで手一杯になっちゃって古いお友達まで手がまわらなくなっちゃう。
本当にすみません。これから伺います。m(_ _)m

そうか。私一人っ子だから兄弟は羨ましい、ましてやお兄さんが・・なんて思っちゃうけど、兄貴に迷惑かけられるってこともあるんだね。こんな言い方変だけど、だからよぽぽさんお兄さんの分まで頑張ってしっかりしたっていうか、しっかりならざるを得なかったのかな?
ちょっとつらいものがありますね。

>本人の意思ではどうにもらないことで不遇な人を
差別はしないようにと

これってすごく大事ですよね。努力して変えられる事ばかりではないんだから・・。

マイぷれすはこの頃人がずいぶん減ってしまって、管理人さんもやる気が無いんじゃないのかなあ。
by 九子 (2011-10-06 22:18) 

yu-papa

最後まで読ませてもらいました。
まるで私の進むべき道を、この文章の中から読み取りました。
決して負けることなく、病気の養生に専念したいと思います^^
by yu-papa (2011-10-07 20:04) 

九子

yu-papaさん、こんばんわ。少しは楽になられたのかしら。

>まるで私の進むべき道を、この文章の中から読み取りました。

何か共通点ありましたか?皆目わかりませんが・・。
うつ状態のときは間違った判断をしてしまいがちなので、あんまり考えない方がいいと思う。

ご家族を何よりお大事に!
by 九子 (2011-10-07 21:09) 

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