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彼女とお嫁さん [<九子の万華鏡>]

なぜか九子は「いい人」に見られるらしい。
いつも「そんなんじゃないんだぞ!」と思うけど、なかなか言えない。
だから今日は思いきってブラック九子の話をしようと思う。

九子にはどうしても好きになれない人が居る話は何度か書いた。
その人から言われたその言葉を、その痛手を、その衝撃を、忘れられずに何十年も経った。
それなのにその人は謝りもしない。
謝るどころか、言ったことさえ忘れていて九子に馴れ馴れしい。
それがまたなおさら腹立たしい。
この人は嫌な人だが、普通の人だ。

これから書くのは「境界例」あるいは「ボーダーライン」という症状を持つ人だ。
聞き慣れない人はググって欲しい。

それから、このブログの左欄を下の方にたぐると検索窓がついている。
そこに「境界」という単語を入れると境界例とかボーダーラインについての話が出てくる。

実は下のブログの終わりのほうに出て来る「彼女のお嫁さん」が九子が赦せないもう一人の人なのだ。


最近、「彼女」が亡くなった。70代、まだまだ若かった。
何も出来ない(何もしない?)「お嫁さん」に代わって、子供たちに三度三度ご飯を食べさせ、日常生活の一切合財の面倒を見てやり、そして九子がはじめて会った子供たちは、素直にすくすくと育っていた。「彼女」が「お嫁さん」の代わりに育てた子供たちだ。
長い間、「彼女」が家庭の太陽だったに違いない。


本当の事を言おうか。九子は「彼女」のおとなしくて優しすぎる息子にも腹が立っていた。
いくら「お嫁さん」に境界性人格障害という障害があろうと、どうしてもっと別の医者にかからせて、きちんとした生活を送らせなかったのか?

まともな医者なら、「お嫁さん」にあんな自堕落な生活はさせない。
言われるままに睡眠薬をたくさん出して、夕方まで寝ているようなことはさせない。
いくら「お嫁さん」が拒んでも、きちんとした病院のしっかりした精神科医に診せるべきじゃなかったの?

そうしたら「お嫁さん」だってあんなに一日中寝ているようなことは出来なくなって、「彼女」はきっともっともっと楽に過ごせたんじゃないの?
「お嫁さん」の言うなりで、一人、お母さんが苦労してるなんて、お母さん可哀想じゃない!!

でも、こういう事ってなかなか言えない。息子や「お嫁さん」が居ないところでなら、九子は何万回も言っている。
だけどいざ本人を目の前にしてしまうとねえ。

もしも九子がもっと近い親戚なら、言って良い立場に居たら、言っていたかもしれない。
ちょっと九子がハイテンションな時になら、ものの弾みで言っていた可能性もある。
でも「お嫁さん」とは、「彼女」のお葬式まで、数えるほどしか会ったことはなかったのだ。

M氏の親戚はみんなM氏に似て人が良い。
「お嫁さん」に一番腹を立ててるように見えたその人も、結局笑って「お嫁さん」からのお酌を受けた。
「お嫁さん」は人前に出ると別人みたいに明るくなって、出来たお嫁さんを演じる。
それに騙された訳じゃなかろうが、その人は何も言わなかった。

その人は一番「彼女」に近しくて、「彼女」の「お嫁さん」に対する愚痴の聞き役だった人だ。
その人がお嫁さんに一言も言わない以上、九子なんかが言える立場ではない!
九子もその人と同じように何事も無く会釈して、注がれるままに「お嫁さん」からウーロン茶を注いで貰った。
「お嫁さん」のお父さんならどうか?
実は通夜振る舞いで隣の席が「お嫁さん」のお父さんだった。
何か言いたかったけど、穏やかなお父さんを前にするとやっぱり何にも言えない。
だいいち、彼に大きな責任があるって決まったわけでもない。
(境界例は、育ちの中に問題を抱えた人が多いと言われます。)


実は「彼女」の見舞いに最後に病院に言った時、「彼女」の優しすぎる息子と、遠くに嫁いだ人の良い娘も病室に居た。
その場には居ない「お嫁さん」の話が出た時、どんな悪口が飛び出すかと思いきや、二人はなんと!笑っていた。
「お嫁さん」がどんなことをしようとも、受け入れてるよという笑顔だった。

もしも九子が「彼女」の娘だったらどうだろう。
お嫁さんに掴みかかって、「あんたがママを殺したのよ!」と修羅場を演じていたに違いない。

どうして「彼女」の息子と娘は、あんな「お嫁さん」を赦して、こんなにも優しくなれるのだろう?

「北風とお日様」の話は本当だなあと思った。
私はとてもじゃないけれど、あの二人の真似は出来ない。
さすがにM氏に近いDNAだ。

九子は打ちのめされた。
自分のちっぽけさを思った。
まだまだだな!私!
卑しくも仏教徒なのにね・・・。

一旦はそう納得したはずの九子だったが、悟っていない九子はまたあれこれ考える。

だけどあったかいお日様みたいな人々の中で、「お嫁さん」は何の苦労も無く、好き勝手にこの二十何年やってきたんだよねえ?
「お嫁さん」が楽してた分、「彼女」はずっと無理をして、ストレスを貯めて、早死にしちゃったんじゃないの?
それってすごく不公平だよねえ?

北風とお日様の話は、お日様のあったかさが身にしみて、それに感謝出来る人には有効だけれど、そのあったかさに慣れ切って、それが当たり前だと思ってる人にはなんの効果もない。


お日様の暖かさに慣れきっていた「お嫁さん」は、「彼女」が亡くなってから一生懸命頑張って早起きして家事をしているって聞いた。
「やれば出来るんじゃない!」と、性悪九子はついついそう思ってしまうのだけれど、「彼女」の優し過ぎる息子は、そんな「お嫁さん」が無理をして、また具合が悪くならないかと心配しているそうだ。

九子は遠慮がちな日本人だし、「お嫁さん」の前でどうしても本音を伝える事が出来ない。
でも九子が考えたことは、「彼女とお嫁さん」を知る多くの人の想いだと思う。


「お嫁さん」の息子たち、本当に良い子に育ったね。
でもあれは、「彼女」のお陰だよ。
それを忘れちゃだめだよ。
「彼女」がしてくれたことの大きさを、ずっと噛み締めてね。
せっかくそこまでになった子供たちを、これからもまっすぐに育ててね。


この日記は、「お嫁さん」に読んでもらうつもりで書きました。
北風もたまには必用だからね。

優し過ぎる息子と遠くへ嫁いだ娘へ!
あなた方の赦す力と器の大きさには本当に驚かされます。
いつの日か、お嫁さんもあなたたちの温情を受け止めて、変わってくれるといいね。

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