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猫の話 [<薬のこと、ダメ薬剤師のこと、家のこと>]

「犬の話」なら前に書いた。もともと我が家では数年間にわたり犬を飼っていた訳だから、まあ書けて当然かもしれないとは思った。

でも猫が書けるとは思わなかった。(と言いながら、前にも書いてました。(^^;;)

猫というもの、仁義を知らない。
あなたの周りで、犬が突然誰かの家に住み着いたという話を聞いたことがありますか?

犬はたいていペットショップで買ってきたり、誰かに譲り受けたり、せいぜい子供が拾ってきたり・・であって、野良犬であってもその辺はわきまえていて、用事も無いのにずかずかと人の家に上がり込むようなことはしないものだと思う。

ところが猫と言う輩(やから)は違うのだ。

我が家に最初に侵入して来たのは雌猫と思われる。

庭の一角に何十年も物置以外に使い道の無いコンクリートの建物があって、昔は味噌蔵みたいに使っていたようだが、今では年に数回扇風機のストックを取りに行く時くらいしか使わない。
(扇風機は父の選挙の時に選挙事務所用に何十台も買った。それがまだ二階の畳の部屋にずいぶん残っていた。)


実はここで猫を見つけて大騒ぎになった事が大昔にも一度あった。あれはまだ母が元気だった頃のことだ。
その時最初に猫を見つけたのは九子だった。目と目が合って、絶叫した!

「ママ~、ママ~、大変だよ~!猫が居る~!」
我が家では「ママ~」は魔法の呪文で、そう呼びさえすればママが来て、なんでも後始末してくれるのだった。(^^;;

その時もたぶん入り込んだ猫は、そこでお産をしていたらしい。
畳の上の、たまたま置いてあった籠の中をねぐらにしていた。

ママが来てくれてから後の事は、九子は何も知らない。
「あの猫どうしたの?」と聞くでもない。
わかっているのはあれからすぐ、猫はあとかたもなく九子の目の前から消えたというだけのことだ。

こういう九子の良く言えば物事に執着しなさ、悪く言えば、面倒な事には出来るだけ関わりたくない性格が、いざ、呼べど叫べどママがもう絶対に来てくれなくなってしまってからの人生に影を落とす。
その猫をどうやってどこへ追い払ったのか、どこかに捨てたのか、誰かに貰ってもらったのか、肝心のところをもっと良くママに聞いておくんだったと後悔しても、もう遅い。


考えてみると今回の猫は、昔の猫よりも礼儀をわきまえていた。
たぶん畳のある二階の部屋になど上がらない。
ただ脱獄囚の如く、壁の下の土の柔らかい所に上手に穴を掘っては家の中に忍び込み、気がついた時にはもう5匹の可愛らしい子猫といっしょだった。

物置のどこをネグラにしていたかって?
そんなことは九子は知らない。九子が見に行く訳がない。だって、なんか出てきたら怖いもん。(^^;;
でも確実に、彼らは日なたの猫だった。家の中にいるよりも外で過ごす時間の方がずっと長かった。

子猫は皆ブチで、生後数週間ほどだろうか。よくyoutubeに上がっているようなのが4匹と・・・・、おやまっ、もう一匹。ひときわ小さい生まれたてみたいなのが一匹。この子だけは色が真っ黒だった。

猫ってもんは不思議なもんで、どこにでも居る普通ののら猫の子供でも、どれもみんなネットに上げたいくらい可愛らしい。なぜかブス子ブス男が居ないのだ。


それから数日間というもの、猫派のM氏は目を細めた。
チュチュチュと舌打ちをしては猫たちの姿を追うのを仕事から帰ってきてからの何よりの楽しみにしていた。

もちろん餌付けをしてはいけないことはわかっているから何もやらないが、良くしたもので母猫がかいがいしく餌を届けているらしい。
一度は彼女がどこからかトカゲの小さいみたいなのを運んでいるのを目にした。

母は強し!とはよく言ったもので、母猫は九子の顔なんか見ても全然動じない。大きな目で却ってじっとこちらをにらみつける。
「トカゲを取って何が悪いの?子供たちの大事な食料なんだから!」と、彼女のびくともしない目が語りかける。
まあとにかく、母猫はそうやって子供たちを大きくするまでは一人木戸を乗り越えて辛抱強く餌を運び、子猫たちが成長したら、もしかしたらみんなであの木戸を超えて外に、広い世界に出て行こうとしていたのかもしれない・・・と、今になるとそう思う。

「犬の話」に書いたように、そして実は二十年も前に当時名の知れた芸人さんがロケに来て恐ろしそうに眺めているところがテレビ放映されたように、我が家の裏木戸の上にはギザギザの錆びた鉄製の泥棒よけが設置されていて、しかもそれを鉄条網で頑丈に幾重にも巻いてあるから、普通の人間ならまず入ろうとは思わないはずなのだ。

だけど猫にとっては、そんなもの朝飯前なのだろうか。
木戸の施錠も泥棒よけもまったくとんちゃくせずに、母猫は自由に木戸を出入りする。
あの肉球とやらがショックを和らげるのか、それとも彼らは錆びた釘を踏んでも破傷風にはならないのだろうか?


残念ながらそんな平穏な日々は長く続かなかった。
どこからか話を聞きつけてやってきたのは我が家の守護神、きたさんだ。

「猫ってもんは住みつかれちまうと困るんだぜ~。それにココのうちは普通のうちと違って薬売ってるうちだ。目薬に猫の毛でも付いていたなんて話が広がったら、それこそ信用問題だ。
悪いことはいわねえ。 オレが明日うまいこと捕まえてやるから、まあ見てな!」

次の日、きたさんは何か道具とプラスチックの大きな籠と紙袋みたいなものを持ってやってきた。

きたさんはいつの間にか居なくなり、また何時間かしてやってきた時も、いつものように九子は格段気に止めていなかった。
後から聞けばその日、子猫は5匹から3匹に減っていたそうなのだ。

またその次の日、きたさんが昨日と同じように風のように去って行ってから、ずいぶん大きな声で猫が鳴いていた。
泣き声は一日中続き、親猫も心なしか神経質そうな大声を出していた。

きたさんから「わな」と言う言葉を聞いたのはこの時だ。
どうやら一匹がわなに挟まって動けなくなってしまったらしい。

可哀想になあとは思うけれど、九子は何も出来ないでいた。
ところがM氏は違った。

帰るやいなや、暗くなりかけた庭に出て、泣き声のする方ににじり寄った。
「こんなに強く挟まれて、気の毒に!これじゃあ足が死んじまうぞ!九子!マイナスドライバーの大きいヤツ持って来て!」
九子はただ言われるままに動くしか出来ない。

猟師のきたさんが仕掛けたわなは、山でウサギや鳥を仕留めるためのものらしく、子猫を取るにはごっつい。小さい草履みたいな形をしていて、かかったのは例の一番ちっこい黒猫らしかった。
M氏はずいぶん時間をかけて猫の足をわなから抜いてやっていた。

次の朝早く、きたさんから電話がかかってきた。わなにかかった子猫を今から捕まえに行くと言っていた。
「きたさん、あのね、Mさんが猫をわなから放しちゃったんだよ。」といくら言っても、耳の遠くなったきたさんにはわかってもらえない。

結局来てくれたきたさんに事情を話した。
きたさんが気を悪くするのではと心配したが、割合淡白に「逃がすのはいいけれど、後になって困るぜ~。」と一言。
それから何事も無かったかのように、池の掃除などしてくれた。

居なくなった2匹がまだ元気で居ることはこの時きたさんから聞いた。

「うちのそばに気に食わねえばあさんが居てさあ、挨拶もしくさらないし、オレに文句ばっかり言いやがるんだ。面白くねえからな、わなで捕まえた2匹を、そのばあさんちの庭に放してやったんだよ。ばあさんの困る顔見るのが楽しみさあ。」

きたさんが殺生したわけではないことを知ってほっとした。
それにしてもきたさん、90歳になっても気持ちはいたずらっ子みたいだ!

騒動があってから丸二日、九子は裏の木戸を開け放しておいた。
親猫はずっと庭で鳴き続けていた。居なくなった2匹が帰ってくるのを待っていたんだろうか?
その声が三日目にぴたっと止んだ。

猫たちはどうやらわなに懲りて、引っ越して行ったようだ。

静かになった庭を眺めながら九子は考える。
ハリーポッターが力量ある魔法使いである証拠は、ヘビ語が使えることだったっけ。
ヘビ語なんぞはどうでもいいけど、猫語なら使ってみたかった。

ねえ、こないだの母親猫や、ちっちゃい黒い子のわなにはさまった足は大丈夫かい?
どっかへ行っちゃった2匹の子猫の行方を教えてあげようか。
なんなら家族みんなでそっちへ引っ越すってのはどうだい?
嫌なばあさんちの庭に、きたさんはもう二度とわななど仕掛けるはずが無いし、たぶん一生みんなで平和に暮らせるはずだから・・。

そして子供たちには良く言い含めるんだよ。
もう二度と決して、九子んちの庭なんかに来るんじゃないって。


ついに我が家にも猫が!と対面を楽しみにしていたM子がどんなに心底がっかりしていようとも・・・。(^^;;


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